IoT

モノとモノをつなぐだけではない
アライアンスの意義。
新たなサービスを生み出す熱意がつながる場にしたい。

コネクティッドホームという概念を簡単に説明すると、「暮らしのなかにあるモノとモノがネットワークを介して有機的につながり、協調的に働くこと」と言えるでしょう。たとえば、深夜に地震があった際に、ネットワークにつながったモノが緊急地震速報を受信することで、テレビやラジオの電源が入り、照明が点灯し、避難経路のドアや窓が開き、コンロなどの火をつかう機器が停止する、といった対応が同時にできます。また、センサー付きのベッドとトイレがクラウド・コンピューティングとつながれば、居住者の心拍数、呼吸数、体重、尿の成分などの多様なデータを日々蓄積・解析し、なにげなく暮らすなかで健康管理を支援することが可能となります。このようにコネクティッドホームは、私たちの安心で快適な暮らしのクオリティを高めてくれる、素晴らしい可能性を秘めているのです。コネクティッドホームに関する研究は、欧米各国でも盛んにおこなわれています。彼らは、モノの周りにソフトウエアなどで付加価値をつけていくことの重要性、つまり「モノづくりから、サービスづくり」というマインドセットの変換を10年以上前から進め、エンジニアリングを磨いてきました。IoTは、モノ同士をつなげて新しい“サービス”を生み出すことです。日本がこのままモノづくりだけに固執し続けていれば世界の流れに乗り遅れてしまいます。このような動向をふまえると、いまの日本でアライアンスが誕生する意義は非常に大きいと思います。コネクティッドホームを実現するためには、モノ同士をつなぐ技術の連携も必要ですが、それ以上に企業間の垣根を越えて 新しいサービスが続々と生まれていくような、熱意がつながる場をつくる必要もあります。様々な企業が生活者の視点に立ち、わいわいがやがやと試作しながら成功体験を積み重ねれば、世界と戦える日本発のコネクティッドホームができるはずです。私が、そんな場づくりのお手伝いができれば嬉しいです。and more

東京大学 生産技術研究所

名誉教授

野城 智也
Tomonari Yashiro

1957年東京都生まれ。1985年に東京大学大学院工学系研究科建築学科専攻博士課程修了(工学博士)。その後、建設省建築研究所研究員や東京大学大学院工学系研究科社会基盤工学専攻助教授などを経て、2001年に東京大学生産技術研究所 教授に就任。東京大学生産技術研究所 所長(2009~2012年)、東京大学 副学長(2013〜2016年)を歴任。
主な著書:「生活用IoTがわかる本」「イノベーション・マネジメント」